サーメル君物語


2005.1.26
(第壱話)


12月、子鹿のサーメル君が家族になりました。
師走、相方さまの弟の友達達が砂漠にでかけ
鹿狩りをして食しちゃったそうで・・・、で食べちゃった後に
近くにまだへその緒をつけている子鹿を発見。
つまり母鹿をいただいちゃったわけです。
困った挙句、相方さまのところに連れてきたんだとか。

で相方さま継母になる決意をしたわけですが、
この子鹿のサーメル君、まだ母乳の頃に母鹿と引き離されたので、
病弱でございまして、
熱・咳、下痢、吐血・・とひっきりなしに病気。
そのたびに病院をかけまわり、手術・入院を繰り返し
幸いとてもいい獣医さんに巡り会え、
約1ヶ月かかりましたが、やっと先日完全回復に近づいてきたそうです。

すっかり刷り込み状態。
相方さまに100%の信頼を寄せているようでして、
さぁ私が出会ったらどんな反応をするのでしょうか。
家族として受け入れてくれるのかちょっとドキドキ。



2005.4.27
(第弐話)





受け入れてもらえるかちょっと不安と書いたままになっていたサーメル物語。
私がUAEに戻ったのは2月中旬。
空港から家に向かう車の中で「サーメルには、奥さんが帰ってくるから
うまくやってねとちゃんと言ってあるから」と相方さま。
家に到着。さてどんな反応かどきどきの私。
相方さまが帰ってきてうれしいサーメルは、たかたかっと相方さまに
走り寄ろうとして私を発見しギョギョギョ。
この日はしっかり警戒されて、挨拶の言葉をかわすまでもなく(?)終了。
「ちゃんと言っておいてくれたんじゃないの?」と相方さまを責めてみる。

2日ほど相方さまがミルクをあげるのに付き添い、
哺乳瓶を咥えた瞬間に私に交代するという「はやく慣れようぜ作戦」を実行。
なんとかうまくいきそうなことを確認して
相方さまに代わってミルク担当となりました。
そのおかげあって、とりあえずやや警戒心は解けてきたものの
半月はまったく触ることをゆるしてくれず。

生死をなんどもさまよったサーメルは安静のため
まだ砂漠に散歩はそう長く行っていませんでしたが、この頃からお散歩開始。
ーと、砂漠の散歩を初めて1週間ほどした頃
たまたま私が相方さまから離れて反対方向に向かって歩いていくと
相方さまにくっついて歩いていたサーメルがくるっと向きを変えて
私の方へ走ってきてちょっと離れたところから「ブィー」と私に一声かけ
相方さまのところまで戻っていきました。
どうやら「そっちじゃないよー」と言いたかったようで。
このときの感動は
「この私をお父さんと呼んでくれるのか」と継父の気分。
(サーメルのお母さんは相方さまなので)

それからは、それまで相方さま仕事中は囲いの中に入っていたサーメルを
毎朝庭に出すのが私の仕事になり、徐々に距離もちかづくように。
この頃は、洗濯物を干しているわたしから5メートルほど離れて座っている
サーメルを見て「鹿がこんな近くに座ってくれた〜」と
感動したものです。今では一緒の布団で寄り添って寝ていますけど。

初対面から約1ヶ月、きつねに食べられては大変ということで
それまで外で寝ていたサーメルは、一緒に寝室で寝ることに。
警戒心の強い鹿の寝姿なんてみたことのない私。
ベットの上に寝転んで息を潜めて、メガネをかけて(ド近眼デスノデ)
床にひかれた布団の上にいる鹿を夜中まで観察してました。
鹿って目を開けて寝るんです。これ知ってました?(これについてはまた後日)。

というわけで、今ではすっかり家族になりまして、
お散歩も相方さま抜きでいけるようになりました。
最近では私を探して「ブィー」と鳴いたり、知らない人が来ると
傍に来て身を隠したり。庭に水遣りをしていればかならず傍にいます。
殊にジュワーヘル(詳しくはまた後日)が来てからは、
寝ているところを彼女に邪魔されるのが嫌で
私にぴったり寄りそって(時にはお尻を私に乗せて・・)寝たりします。
といっても、相方さまが一番大好きで、帰ってきた相方さまを見る目は
本当に嬉しそう。
散歩も相方さまが一緒だと歩きも軽やか(『ハッピーウォーク』と呼んでいる)、
サーメルダンスも見せちゃいます。

最近はいろいろ覚えました。
庭にいて、家に入りたくなると玄関まで来て「ブィーブィー」。
時にはノックをしてみたり。
家にいても外にいきたくなると「ブィー」。
それでもダメだと窓をこつこつ叩いて「外にでたいのー」と意思表示。
「サーメル、おいで!」もわかるようになり、
「それは食べちゃだめ」の「だめ」もすっかり理解するように(どれも日本語)。
ある日は、職人さんが庭に入り家の裏に行こうとすると
慌てて走っていって、鼻の穴をふくらませて道を塞ぎました。
「怪しいな、ここから入っちゃダメ!」とでも言うように。
ーといってもかわいくってぜんぜん威嚇になってないんですけど。

気がつけば、はなももあくと負けず劣らず書けるほどに家族になった私達。
「愛情はまだ沸いてないもんでよ」なんて言っていたのに、
あぁこうなっちゃうと、これまた家を空けて旅行に行くのが大変なんだなぁー。

<おまけ>

布団に寝る鹿




2章へつづく・・。

2005.5.15


一ヶ月と少しではありましたが、家族でいてくれたジュワーヘル(アラビア語で宝石)です。